顕微鏡写真の簡単デジカメ撮影法
NTT西日本大阪病院 阿倉 薫
○デジカメの撮影画素数について
デジカメでは、普通のカメラのフィルムにあたる部分にCCDと呼ばれる光発電素子の集合体が使われています。
現在市販されているデジカメの撮影素子数(画素数)は10万〜630万画素と大きな幅があり、風景や人物などの一般的な写真では、大きな画素数で撮影する程解像度の高い(細部まで写る)画像が得られます。しかし、顕微鏡写真では、細部の描写は対物レンズの分解能に依存するため、必要以上に画素数の大きなデジカメで撮影してもレンズの分解能よりも細部は撮影できず、ファイルが大きくなり、取り扱いに手間取り、保存にも大容量のメディアが必要になります。さいわい、デジカメはそのカメラのもつCCDの最高画素数で撮影できるのはもちろん、表2に示したように、より小さな画素数での撮影も可能ですので、使用目的に応じて画素数を選ぶのがよいと思います。
では、どのくらいの画素数で撮影するのが適当かといいますと、使用目的によって違ってきます。
1.インターネットで細胞の写真を送る
大部分のコンピューターの画面は1024X768(XGA)ドットか1280X960(SXGA)ドットで表示していますので、これ以上大きな画素数で写真を送っても全体を1度に見ることは出来ないため実用的ではありません。写真12は実際のインターネットの画面です。全体を一度で見るためには最大で800X600画素、現実的には640X480(VGA)画素が適当と思われます。さらに小さい320X240画素の写真では細部の確認はやや困難になります。
写真13は640X480画素で撮影した線毛円柱上皮です。線毛の1本1本まで確認できます。 線毛の直径は、約0.2μmですので顕微鏡の分解能(撮影に用いた顕微鏡の対物100倍の2線間の分解能は0.21μm)まで写っています。又、より大きな画素数で撮影した細胞と比較しても遜色はありませんでした。
インターネットで細胞の写真を送る場合は640X480画素の撮影で十分です。ファイルの大きさは1枚あたり50KB前後ですので普通の電話回線を用いて20秒くらいで送信できます。
2.液晶プロジェクターを用いたプレゼンテーション
現在主流の液晶プロジェクターはコンピューターの画面と同じ1024X768ドット表示ですので、1024X768画素で撮影した写真を用いるのが最適です。プレゼンテーションには、パワーポイントがよく使われていますが、640X480画素の画像を挿入しますとやや小さく余白ができてしまいます(写真14)。かといって1024X768画素の画像ですとはみ出てしまします。デジカメの画像は拡大すると極端に画質が低下しますので、大きめの写真を挿入して、縮小して使用する方が得策です。
3.学会発表の示説写真
学会発表の示説写真は、大きすぎても、小さすぎてもその効果が半減します。平均的にはA4サイズの写真がよく使用されているようです。640X480画素の写真を印刷(72dpi)(*1)します22.58X16.9cm(より小さくしか印刷できない印刷ソフトもある)になりA4の用紙では余白がたっぷりな印刷になります(写真15)。余裕を保つ1280X960画素か1024X768画素で撮影するのがいいと思います。
(*1)デジカメ画像をそのままで印刷しますと72dpiで印刷されます。種々の解説書には印刷の解像度を200前後にして印刷すると高品位な画像が得られると記載されていますが、顕微鏡写真では、印刷の解像度を上げても画質はほとんど変わりません。
横X縦 | 総画素数(万) |
3072X2048 | 629 |
2048X1536 | 315 |
1600X1200 | 192 |
1280X960 (sxga) | 123 |
1024X768 (xga) | 78 |
640X480 (vga) | 31 |