細胞検査士会
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乾燥固定標本を用いてパパニコロウ染色を行うための前処理としてウシアルブミンや
生理食塩水を用いる方法もあるが、今回市販のスキムミルクを用いたパパニコロウ染色を行い染色性の検討を行った。更に免疫染色への応用を試みたのでその結果と細胞像を供覧する。

検討材料は全て塗抹後室温放置し、自然乾燥したものを用いた。

 検討? 生理食塩水、ウシアルブミン、スキムミルク処理との比較
 検討? スキムミルクの濃度と処理時間の検討
 検討? 室温放置標本スキムミルク処理の検討
 検討? 免疫染色の検討


材料>:喀痰、尿、婦人科自己採取スメア、子宮内容液、胆汁、組織タッチ標本、陽性及び陰性例の
       体腔液(胸水、腹水)、関節液、乳腺嚢胞穿刺液

<固定条件>:塗抹後室温放置し自然乾燥したもの

検討方法>

?生理食塩水、ウシアルブミン、スキムミルクとの比較
 自然乾燥標本をウシアルブミン、生理食塩水、スキムミルクで20分間室温処理後水洗、
 15分間固定後パパニコロウ染色を実施した。

?スキムミルクの濃度処理時間の検討
 濃度   5%、10%、15%、20%濃度で15分間処理を実施、比較検討した。
 処理時間 10%濃度で処理時間を5、10、15、20分間を比較検討した。

?室温放置標本スキムミルク処理の検討
塗抹後自然乾燥標本を用いて翌日、3日後、7日後にスキムミルク処理と未処理のパパニコロウ染色標本の比較検討

症例供覧 
塗抹後室温放置し、翌日スキムミルク処理例の細胞像

?免疫染色の検討
塗抹後自然乾燥標本にスキムミルク処理後15分間固定し、免疫染色を行い、通常湿固定標本、乾燥標本未処理標本との比較検討


検討? 生理食塩水、ウシアルブミン、スキムミルク処理との比較                    

胸水・腺癌例(対物100倍)

結果:
乾燥標本はスキムミルク処理(10% 20分)で湿固定に近い改善を認めたが、10%ウシアルブミン処理では核のスリガラス状変化を示すものも存在し、生理食塩水処理ではオパーク状の核変化等の変性所見を認めた。提示した症例を含め15例について検討を行った。いづれの標本例でもほぼ同様の結果であった。

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検討? スキムミルクの濃度と処理時間の検討                              

胸水・腺癌例(対物100倍)

〈濃度の検討〉
10%濃度で湿固定標本と同程度の改善を認め、15%、20%濃度でも同様の結果であったので10%濃度が適当と考えた。
〈処理時間の検討〉
5分間処理でも核網所見は顆粒状に変化し、核縁、核小体も明瞭化しているが20分間処理が最も湿固定に近い核所見と考えた。
結果:提示した症例を含め18例について検討。スキムミルク処理は濃度10%、処理時間20分間が最も優れていた。


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検討? 室温放置標本 スキムミルク処理の検討

左図:自然乾燥、  右図:スキムミルク処理(対物100倍)

材料:結腸癌組織タッチ標本

結果:
室温放置3日目例では翌日処理のものに比べるとや や効果が劣るものの細胞サイズ、核網、核縁、細胞質の染色性に改善が見られ良悪性細胞判別は特に問題はないと考えられた。
室温放置7日目例では細胞集塊中の核縁及び核内所見の明瞭化、細胞質の染色性に改善が見られたが、孤在細胞はあまり改善がみられないものも存在した。
提示した症例も含め17例について検討し、いづれも3日目までは鏡検可能な改善を認めたが7日目では改善が見られないものもあった。


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〈症例供覧〉  塗抹後室温放置し、翌日スキムミルク処理例の細胞像

左図:自然乾燥  右図:スキムミルク処理(対物100倍)

どの症例においても湿固定に近い状態まで改善を認めた。提示した5症例を含め約70症例検討を行ったが、おおむね良好な結果を得た。


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検討? 免疫染色の検討
通常湿固定標本、乾燥標本・スキムミルク処理、乾燥標本・未処理についてVimentin染色を行った。
vim:通常湿固定
vim:乾燥標本 スキムミルク処理
vim:乾燥標本・未処理

結果:
陽性局在はスキムミルク処理、乾燥標本ともに通常湿固定標本と同様の部位にdabの発色が見られ、一次抗体が特異的に反応していると考えられた。
スキムミルク処理ではパパニコロウ染色と同様、細胞サイズ、核所見の改善がみられ、dabの発色もはっきりとしており免疫染色の陽性所見として評価できると考えた。
乾燥標本未処理では細胞質、核の膨化が見られdab発色も不鮮明で評価が難しいと考えた。vimentin2例、cytokeratin2例において検討を行ったが、同様の結果を示した。

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